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私は描いた。今から考えても凄まじい勢いで描き続けた。昼間は医学部の授業、それ以外のほとんどの時間を漫画を描いて過ごした。
文学部に通う知人の紹介で、私の作品は学生街の貸本屋に並んだ。漫画雑誌というもののなかった時代、それはほぼプロデビューを意味した。
やがてどうした経路を通ってか、私の行いは叔父の知るところとなる。父とは異なり、叔父は漫画というものを徹底的に馬鹿にしていたから、私への怒りといったら凄まじいものだった。
下宿を追い出されるほど怒鳴り散らされ、泣いて頼んだが漫画用具を破棄され、そして生活費を盾に取られた私は逆らうことが出来なかった。自分のしていることへの負い目もあったのかも知れない。私は貸本漫画家の道を諦めさせられた――はずだった。
私はとにかくしつこい性質だと言われる。たしかに自分でも時折呆れることがある。
ペンを奪われても原稿用紙を失っても、私の手元には父が小学校卒業記念に贈ってくれたモンブランの万年筆があり、ノートだって持っていた。
――これで描けるじゃないか。
誰に見せるわけでもなく、それでもまだ見ぬ誰かのために、私は新作を描き始めた。万年筆の青インクだけで綴られた『人喰い鬼』を。
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