episode239 倒錯と狂気の進む先 ①

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「まあいいさ。この後は急ぐ予定もない」 征司は濡れたジャケットを脱ぐと 折り目正しく椅子の背にかけ言った。 「おまえの方は?」 「僕……ですか」 思いがけない気遣いにトクンと心臓が跳ねる。 「この後、予定は何もなしか?」 神の御前だからというわけでもなかろうに。 征司はいたく優しく尋ねるんだ――この僕に。 「……ありません」 前を向いて答えるだけで精一杯だった。 「そうか」 先日のガラスの破片。 昨夜の黒い羽。 僕に危害を及ぼすモンスターと化したはずの兄。 「濡れてないか?服」 にしては征司の反応は あまりにも予想外だったんだ。
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