episode239 倒錯と狂気の進む先 ①

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何事もなかったように 着替えを済ませカーテンを開く。 「お宝は無事だ」 「お疲れちゃん」 気だるげにソファーに身を投げるデザイナーに 征司はマタ・ハリの衣装を放った。 「あんた最高。今度から顔パスで入れたげる」 デザイナーは咥えていた煙草を いっぱいになった灰皿でもみ消すと 「結構です」 「そう言わずにまたいらっしゃいよ」 頑なな僕を尻目に口端で静かに笑った。 「それで?欲しい物は?」 「何も。何もいりません」 結局汚い大人に弄ばれただけの僕は 腹立たしくてそっぽ向いた。 「あ……」 しかし運命の歯車は どんな時でも回り続けているのだと僕は確信する。 (あのガウン……!) いい風にか悪い風にかは別として――。
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