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そこには昨夜の夢か幻か――。
征司のととにかくよく似た
羽根つきのガウンを着たマネキンが立っていた。
僕の視線を辿って
「あのガウンどう?着てる?」
デザイナーがいとも軽い調子で征司に尋ねる。
ドクン――音を立て心臓が縮み上がった。
僕は心の中で叫んだ。
今あれに関して話し合うのは
とてもデリケートな問題なのだと――。
征司はしばらく目を凝らすように
マネキンが着ているガウンを見つめていたが。
「ああ……」
やがて悠然と首を横に振り
ようやく思い出したかのように言った。
「着てない。盗られたんだ――」
「えっ……!?」
素っ頓狂な声を上げたのは僕だった。
「盗られたって……誰にですか?」
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