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episode239 倒錯と狂気の進む先 ①
天気雨は幸運の兆しだという。
その上虹が見られればその幸運は本物だと。
「まさかダブルレインボーとは」
人の捌けた庭園で僕らが見たのは
奇しくも幸運の象徴である二重の虹だった。
「新郎新婦は悔しがるだろうな」
特に老い先の短い新郎の方は――。
いつも通り悪態ついて付け加えると
征司は皮肉な笑みを浮かべ僕の隣に腰を下ろした。
「雨……止むかしら」
「さあな」
二重の虹から天気は急変。
生温かい風に流されてきた雨雲が
空を覆ったと思った途端どしゃ降りに。
僕らは考える間もなく
駐車場とは反対方向のガーデンチャペルに駆け込んだとこだった。
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