ブルーリヴァー・メモリー

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「……であるから……この際にエネルギーを放出する。同様の……しばしば使用されるルミノール反応で……」 講義室の生徒の半分が机に伏していた。 「……君たちも、文系ではあるが、このくらいは一般教養だ。覚えておくのが常識だ」 講義室の一番後ろのドアをゆっくり開き、かがんで入る。後ろの机に置き去りになった出席表に、そっと自分の名前を書く。 「さて、この現象はわが国でも見られており……」 かがんだまま、講義室を後にする。ドアをそっと閉める。 かくてマコトの『空出席』は成される。この講義にはろくに出席したことがない。 自転車を乱暴に停めると、地面の枯葉が音を立てて破れる。鍵もかけずに後にすると、彼は自動ドアをくぐり、学生証を取り出した。それを機械にかざすと、ゲートが開いた。 中は涼しくて物音も少ない。マコトは図書館がお気に入りだった。彼にとって、つまらない講義を聞くこともなく、他の学生の喋り声を聞くこともない。彼はよく講義を抜け出し、図書館に籠っていた。講義を受けず、一日中いることもあった。 子供の頃から、本を読むことが好きだった。外で遊ぶことよりも、家の中で文字を眺めていることの方が長かった。おかげで、勉強は(特に文系科目は)人一倍成績が良かったが、勉強というものがそもそも好きではない。大学に入ると、彼は主体的に何かを学ぶことはなかった。中学校や高校の頃よりも大きな図書館の中で、古い紙とインクの香りに包まれながら、読書をしていたかった。 彼は、他の誰かと同じように、講義に出たり、放課後に遊んだり、サークル活動に明け暮れたりすることはしなかった。昔からそういうことをするのは、青臭いて格好悪いものだと思っていた。学校内では友達はおろか、会話できる人もほぼいなかった。
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