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やはり、自転車を乱暴に停めると、地面に落ちた小枝が音を立てて砕ける。
「なんだい、昨日から連続でさぼりかいな」
「まあね」
「よほど落第が怖くないか、あるいは講義に興味がないか」
カードをゲートにかざす前から、ツカサは軽口を叩いてきた。
顔も合わせず、マコトは本棚に向かう。昨日とは違い、“民俗学”の本棚に向かう。
ツカサは面白がって、後を追う。
「そんなに来たって、本は代わり映えしないと思うがねえ。多くの学生が好きな漫画屋やレコード屋とは違うのさ」
「僕はここへ買い物をしに来ているわけじゃない。そんなに青くはないんだ、僕は」
「よくもまあ、閉館まで寝倒している人がいうもんだねえ」
マコトは聞こえるくらいの大きくため息を吐くと、
「いいから、司書としての仕事をしたらどうだ」
「もちろん仕事はしているさ、今日は受付じゃなくて本の整理さ。君はあまり司書の仕事を理解していないのではと思うがね」
彼は憎まれ口ばかり叩く司書に背を向け、本棚を眺めた。
「まったく、学生の本業をしない君から、仕事をしていないだなんて、全く心外というやつだよ」
「黙ってくれよ…!」
少し声を荒げると、マコトは、本棚の少し高めの位置にある本を取ろうとした。背丈が足りないせいか、彼の指は隣の本に引っかかった。
いくつか本が落ちて音を立てる。
「あーあー、書物に傷を付けないでくれよ」
ヘラヘラと笑いながら、ツカサは彼の落とした本を拾う。マコトは、気の悪そうな顔をしている。
「……ごめん」
「……だいたい君は、何をしに図書館へ来たいのさ」
「……」
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