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「そりゃあ、ここは空調も効いているから、ただ眠りにくるような連中もいる。君だってよく寝てはいるが、どうも眠りに来るようには見えない。それなのに、本を読みはするが借りることもない」
落ちた本を、楽々と本棚に収めながら彼女は言った。
「君のしたいことが見えないね。まあ、騒いだり本に傷をつけたりしなければ、いくらでも来ていいんだが」
「……あんた、司書なんだろ、本を探したりできるような……」
「ん、その通りだけれど?」
「じゃあ……僕が探しているものを手伝う、とかさ」
「手伝う?」
「手伝って……くれないか?」
「なぁーにぃー?散々私に文句を言っておきながら手伝ってくれだと?」
ツカサはしたり顔を全面に、マコトの俯いた不機嫌そうな顔を覗く」
「お願いしているんだ……」
彼の顔を見ると、まるで子供だった。まさか、学生だとはいえ歳の割にこんな表情をするような奴がいるとは。
「……ほう、ならば司書の出番だな。本の名前は?」
「手伝ってくれるのか?」
「もちろん、仕事だからな。まあ任せておきなよ、私は文系専攻だが、ここにある本のことなら理系科目含め全てわかるさ。小難しい方程式や物理法則も把握しているさ」
「いや、実は本を探してはいないんだ」
「はい?」
「実は、ある場所を探していて」
「ちょっと待て、君は本を探すのじゃなしに図書館へ来ていたのか?」
「どこかの本に手がかりがないのかと思っていたんだ」
「随分と回り道をしている気がするな君は」
ツカサは近くの椅子に座り、少し呆れたように、しかしどこか楽しそうに、閉架図書館のリストを見始めた。
「場所といったな。どんな場所なんだ」
「少しおぼろげなんだ……」
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