第3章

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 もう一人の書記は、丸顔でどこかおっとりしたところのある女子だった。彼女もやはりクラスメイトの推薦で書記委員に任ぜられたのだが、その理由は明白だった。彼女は書道の段持ちなのだ。  一応は正副委員長と共に、クラスの役員待遇の立場であり、ゆえに生徒会の会議などにも出席したりする業務もあったが、書記の主な仕事はその名の通りに、何よりもまずは字を書くことだった。  私は、正直言って大して字がうまくない。だから、黒板や壁貼り掲示物などに文字を書くとき、どうしても彼女のそれに比べて見劣りがして、自分自身としてとても恥ずかしい思いをした。どうせこんなことになるなら、いっそ正副委員長のどっちかにでもなればよかった、と私は何度も後悔した。  そんな私に配慮してくれたのかどうか、次第にそういった表に出すようなものについては、もう一人の書記である彼女が担当してくれるようになり、私は主にノートにメモをとる役割になっていった。
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