第5章

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 私とよくアニメ番組の話に興じていたクラスメイトのYも、かなり体毛の濃い生徒だった。聞けばどうやら小学校時代からそうであったらしい。その中二の春の健康診断でも、上半身裸になったときに露わになった、その背中一面にごわごわと生えた産毛をクラスメイトたちにからかわれていた。それに対して、俺の背中ジャングルだから、などと卑屈にさえ思える笑い顔をして、彼はおどけてみせていた。それを見て、私にはとても彼のように、自虐でかわせるほどの余裕は持てない、と思った。(ちなみに私は当時、まだ腋の毛も数本伸びてきた程度であったので、その健康診断の際は、事前に毛抜きを使って対処する程度で済んでいた。その後急速に私の体毛は密度を増して成長していくことになった。全く、私にとって私自身の成長とは、迷惑である以外のものではなかった。)  見回したところ、さしあたりこのクラスでは、私と同程度の状況にあると見受けられる生徒といえば、どうやらそのYとKの二人くらいであるようだった。よりにもよってこの二人の仲間入りをするとは。さすがにそれは私にとって受け入れ難いことだった。誰の目にも明らかに彼らと同じ立場にある者として見られてしまうような事態になることだけは、私としては何としても回避したかったし、絶対に回避しなければならないのだと、頑ななまでに強く心に感じた。
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