別の場所

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「てゆーか、なんで夜なのにまだ作業してんの?」 ぶつぶつ言いながら作業員を睨み付けていた。 (あーあ・・・新しくなったら 忍び込むの無理かなー・・・) 私は別に忍び込む事が好きというわけではない。 ただ誰も居ない場所で 静かな場所でたった一人で 何も考えず浸かりたいだけ。 忍び込む前は夜の海に行ったりもした。 でも波の音がうるさくて 何も見えないからクラゲが居るのにも 気付かなくて。 結局、刺されてトラウマに。 田舎の川にも行ってみた。 流れがあって身を任せてたら流されるわ 石に後頭部強打するわで落ち着かないし。 終いには大嫌いなヘビも泳ぐし。 市民プールは日中しか開けてくれないし。 そもそも家のお風呂は? って言われそうだけど 厄介者が居て話にならない。 (別の場所を探さなきゃ・・・) 肩を落としながら歩き出した私を 遠くから見つめる男性。 私は気付かずに帰ってきた。 ガチャ 「あ、しずくちゃんおかえりー」 (まだ居るか!このヒモホモ野郎!) 居候の河上 準(かわかみ じゅん) こいつのせいで私は自分の部屋なのに リラックスする事も出来ない。 1年半前に会社に来ていた清掃会社のアルバイトだった準と出会い、一目惚れしたと告白された。 何回断っても諦めないから 仕方なく付き合ったがキスまでしかしない彼に したくならないのかと聞いたところ、 ホモだと言われた。 速攻別れたが、アルバイトは辞めた後だったし 実家には帰れないだの、金がないだのと 屁理屈やごたくを並べて結局居座っている。 「ねーねーしずくちゃん。 ・・・お腹空いて死にそう。」 「あっそ。死ねば?」 いつもの会話。 今日はただでさえ準のせいでイライラしてるのに 追い討ちをかけるかのようにプールの工事・・・ おかしくなりそうだ。 「ねぇ。 あんたいつ出て行くの? いい加減まじでうざい。」 「んーまだわからないけど、 いつかは出て行くから安心してね?」 (何をどう考えたら安心できるってのよ!) 本当に限界。
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