14人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
朦朧としたフローラの意識の中に、どこからか声が響いていた。
〈どうだ。これはかなり効いたようだな。白状してしまえ。全てを白状するんだ。これ以上の責めを受けて再起出来た人間はいない〉
フローラはかすれるような声で言った。「絶対に言うものですか……」
〈そうか、ならば、君はメタパラ心理学の深淵を見ることになる〉
フローラはやや不安を感じていた。(ああ、もう気力も限界に近付いている。鍛え抜かれたはずの私の“超超自我”が崩壊したら、何もかも終わりだわ……)
フローラは恐慌におそわれ始めた。(私は一体何を守ろうとしているの。この先どんな責め苦があるというの)彼女は追い詰められていた。
声が響いた。
〈次は退屈な映画を見せてやる!〉
「そ、それだけはやめて!」
〈見るんだ!〉
「いやっ、いやっ、いやっ」
映画が始まった。
「かんにんしてください」
退屈な場面がひたすら続いた。
「いやあっ、許してえっ!」
淡々と……。
「やめてぇっ!」
ひたすら淡々と……。
あああっ……。
夢うつつの狭間をさまようフローラの脳裏にミスター・サーペントの悪魔じみた顔が巨大な蜃気楼のように浮かび上がった。巨大なその顔の幻影は言った。
「くだらないか? 退屈か? 辛いか? 苦しいか? それが全てだ! それが報いだ! どうだ! どうだ! まだ続けるぞ! まだ続けるぞ……」
最初のコメントを投稿しよう!