拷問のダンス・ビート

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 朦朧(もうろう)としたフローラの意識の中に、どこからか声が響いていた。 〈どうだ。これはかなり効いたようだな。白状してしまえ。全てを白状するんだ。これ以上の責めを受けて再起出来た人間はいない〉  フローラはかすれるような声で言った。「絶対に言うものですか……」 〈そうか、ならば、君はメタパラ心理学の深淵を見ることになる〉  フローラはやや不安を感じていた。(ああ、もう気力も限界に近付いている。鍛え抜かれたはずの私の“超超自我”が崩壊したら、何もかも終わりだわ……)  フローラは恐慌におそわれ始めた。(私は一体何を守ろうとしているの。この先どんな責め苦があるというの)彼女は追い詰められていた。  声が響いた。 〈次は退屈な映画を見せてやる!〉 「そ、それだけはやめて!」 〈見るんだ!〉 「いやっ、いやっ、いやっ」  映画が始まった。 「かんにんしてください」  退屈な場面がひたすら続いた。 「いやあっ、許してえっ!」  淡々と……。 「やめてぇっ!」  ひたすら淡々と……。  あああっ……。  夢うつつの狭間をさまようフローラの脳裏にミスター・サーペントの悪魔じみた顔が巨大な蜃気楼のように浮かび上がった。巨大なその顔の幻影は言った。 「くだらないか? 退屈か? 辛いか? 苦しいか? それが全てだ! それが(むく)いだ! どうだ! どうだ! まだ続けるぞ! まだ続けるぞ……」
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