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琴子さんは僕を追い払うことはないけど、僕に触れることもない。それどころか、目を合わせてくれることもない。
この家には僕の仲間や別の動物の匂いがしないから、もしかしたら、琴子さんは動物が好きじゃないのかもしれない。
じゃあ、どうして僕を好き勝手にさせておくんだろう。
空の色を絵の具で塗り替えるように夕焼けがきて、夜がきて、レモン色の月が星座の中にぶら下がる頃。僕たちは集会をはじめる。
場所は町の真ん中くらいにある公園。琴子さんの家からほど近い。
誰が決めたのかわからないけど、一日の終わりのその時間になると、どこからともなく僕たちはそろそろと集まってくる。
そのうちの一匹が言うには、人間の子供が遊ぶ遊具を置いているこんな公園は、都会ではもうすっかり姿を消したそうだ。
黒い毛並みの彼女が言った。僕が生まれる前からここにきていた先輩だ。
「三丁目のこゆきが空に還ったってさ」
「あぁ、あの真っ白な毛並みが自慢だった。飼い主の子供によく尻尾を掴まれたらしいね」
「嫌いなものには触れたりしないさ。その子供はこゆきが大好きだったんだ。こゆきもそれをよくわかっていたから好きにさせてたのさ」
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