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「そうなのか」
「本人たちにしかわからない、愛情の形があるのさ」
「この頃の夜は時雨が多かったね。でも、ぽっかりと晴れた夜があった。あの日に還っていったんだね」
僕は、その日と同じように輝きを邪魔するものがひとつもない満天の星空を見上げた。
裏側から針でつついてビーズでも突っ込んだみたいな、そんな星がきらきら輝いている。黄色や赤やオレンジが呼吸するように点滅している。
「銀の舟には何を一緒に乗せていったんだろう」
僕たちには信じている話がある。
魂がここから離れて空に還るのは、必ず晴れた夜。星がたくさん瞬く中を、銀色の舟に乗ってゆっくりと昇っていくのだ。
辺りはまるで星の海で、笹舟のようなとがった舟の先端がそれをカシャカシャかき分けていく。どんどん近づいてくる月からは、シロップのような光がほとほと落ちてくる。そして、僕たちも星のひとつになる。
とても素敵な光景。だから、僕たちは魂が離れていくことを怖がらない。
そして、そのとき舟にはいちばん大切なものをひとつだけ一緒に乗せていけるのだ。そうすると、来世でそれとまた近くにいることができる。
「それはこゆきにしかわからないね。じゃあ、あんたは何を乗せていく?」
「僕は……」
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