星降る夜に銀の舟で

9/9
前へ
/9ページ
次へ
 琴子さんが笑わないのにも、いつもひとりでいるのにも深くて悲しい理由があって、それはたぶん僕じゃどうにもできない。  でも。  ノラ猫ってわかっていても、僕を追い出さない優しい琴子さん。ご飯を常にいちばんいい状態で出しておいてくれる、思いやりのある琴子さん。  僕も、琴子さんの素敵な笑顔を見たいよ。  だから、僕は毎日ここにくるよ。いつまでもくるよ。  琴子さんがまた笑顔を取り戻すのを、そばで静かに見守ろう。  琴子さんがこれ以上寂しくなってしまわないように、悲しんでしまわないように、僕は頑張ってできるだけ長生きをする。  今の人生で取り戻せなかったとしても、大丈夫。  琴子さんが空に還るときには、僕は琴子さんをさらって銀の舟に一緒に乗せてあげるから。  月の光のシャワーを浴びながら、美しい星の海をずんずん進む舟の上で、琴子さんの大切な二つの星を探そう。  僕は、目を血眼にして、杏ちゃんと、パパの星を見つけてあげる。  その隣に、並べて琴子さんの星を置いてあげる。  それが、僕の愛の形。 (fin)
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加