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『ザーッ』
時計の秒針の音だけだった静かな部屋に、シャワーの音がダイレクトに響いてくる。
私はゆっくりと起き上がると、散らばっていた衣服と下着を畳んで重ねた。
「恭ちゃんが出たら、シャワー借りよう…」
汗ばんだことでしっとりとしている首筋や、恭ちゃんから浴びたキスで包まれている身体が気になる。
布団に包まりながらベッドの脇に立て掛けてあったハンドバックを手に取り、スマホを取り出した。
サイドのボタンを押して画面を付けると、通知はLINEが1件。
開いてみると、バイト時代からの友人、希美からだ。
既読せず画面を消してスマホを置く。
この半年、私が心の底から待っているのは来るはずもない圭からの連絡だった。
連絡したい衝動に駆られ、何度か圭の画面を開いたけれどそれ以上のことはできなかった。
恭ちゃんと過ごす時間も、その一挙一動を圭と比べてしまう。
結局私は圭が忘れられてないし、恭ちゃんに失礼なことをしている。
分かってるけど、今彼を手放す強さは私にはない。
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