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「あ!凛乃!お待たせ!」
午後8時。
先に席について待っていると、沙織がやってきて、個室に付いている格子状の引き戸をガラガラと閉めた。
4人がけの木のテーブル。天井にはシンプルなランプが淡い橙に灯り吊るさがっている。
薄暗く、こじんまりとして落ち着く。
「沙織、お仕事だったの?」
「うん、土曜保育の当番だったの」
「そっか、お疲れ様」
上着を脱いだ沙織は、ピンクのくまのキャラクターエプロンに、ジャージ姿だった。
沙織は昔から、“THE 女の子”。
顔も仕草も、性格まで愛らしくて、当然男子からも人気だった。
短大も職場も違うけれど、沙織も保育士をしているから、就職後、時々会っては相談や愚痴を言い合っていた。
「凛乃、もう決まってる?」
「うん、このサラダセットにしようかな」
「あ、いいね。じゃあさおりはこのパスタのサラダセットにする」
私は傍にあった呼び鈴を鳴らした。
「ところで沙織、何かあったの?」
食事はそろそろ終わりそうなのに、なかなか本題に入らない沙織に、助け舟を出したつもりだった。
彼氏と何かあったのかな…。
「あのね凛乃。恭介くんと、どう?」
恭ちゃんは、沙織の彼氏の友達。
充分ありえることなのに、この話題はまったく予想していなかった─。
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