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あのあと、沙織には先に帰ってもらった。
去り際に、
「凛乃、また遊ぼうね。無理しないでね」
なんて、優しい言葉をかけてくれるものだから、さらに自分が嫌で嫌で涙が出そうになった。
泣く資格なんてないのに。
「今日は私に払わせて」
と言ったけれど、沙織は首を横に振ってお金を置いていった。
[恭ちゃん、これから言っていい?話したいことがあるの。]
私はすぐにLINEを送った。
せめて、自分の口でちゃんと伝えよう。
それが、彼にできる最後の誠意だと思うから。
既読が付いて、しばらくしてから
[気をつけてきてね。]
と返事が来た。
ドクドクと黒く、重くなっていく心を感じながら、私はお店をあとにした。
あの話が始まった時のまま、冷たくなっている2皿のパスタを残して─。
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