2.後悔

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“無になる”ってこういうことをいうんだろうなと、そんなことを考えていた。 悲しくないし、(いか)りもないし、もちろん、嬉しくもない。 でも、最近の、悲しかったり、悔しかったり、いろんな感情に目まぐるしく襲われていた時より、ずっと楽に感じてしまった。 ──なんて間抜けな格好なんだろう。 自転車に乗るし、楽ちんだからという理由で履いていた、ウエストはゴムで緩いシルエットのスボン。 それは私の足元に、だらしなく落ちて踏まれている。 さらによりによって、どうして今日、お気に入りのナチュラルな白を選んでしまったんだろう。 そして右足だけ履いているパンツ。 脱ぎそびれた黒のスニーカー。 「…あはは」 小さな声で自嘲した。 全てが済んだあと、恭ちゃんは目も合わせず、何も言わず、よろよろとトイレに入って行った。 そのまま出てきていない。 微かに聞こえてくる、鼻をすする音。 私はその間抜けな格好を静かに整えて、部屋をあとにした。
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