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30分くらい経っただろうか。
私は浸るべきでない余韻に浸っていた。
圭が、電話に出てくれた。
たったこれだけのことで、私にはまだ望みがあるんじゃないかとか、実は圭も私のこと気になってたんじゃないかとか、いろんなことが頭の中を巡る。
そしてその度に、[そんなわけないよ]とまだかろうじて残っている冷静な私が鎮圧した。
その時。
私の手の中でスマホが震えだした。
このバイブの長さは、着信だ。
まさか…
まさか…
と思いながら画面を見ると、[桐沢桃也]。
珍しい名前が表示されていた。
ドキドキと高鳴った胸が一瞬で鎮まる。
「もしもし?」
私はすんなりと現実世界に戻り、大通りを歩き出した。
『あっ、凛乃ちゃん?遅くにごめんね。今大丈夫?』
「桃也くん、どうしたのー?1人だし大丈夫だよ!」
『合コンの話なんだけど』
「あっ、うん」
すっかり忘れてた。
『希美が彼氏に、たとえ友達の為だとしても行くなって言われたらしくて。まあそりゃそうだよなあ』
「えっ!そっかあ、じゃあどうしようね」
『あれ?てか凛乃ちゃん外?』
「うん。ごめん、声よく聞こえない?」
『いや、車の音とか聞こえてきて。こんな遅い時間に大丈夫?まあ、こんな時間に電話してる俺も俺だけど』
「ん?」
気がつけば、時刻は1時を過ぎていた。
やばい、終電何時までだったかな…
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