2.後悔

14/18
前へ
/452ページ
次へ
「ごめんね、私汚いね。ハンカチ敷いて座るから。えっと…」 バックの中を慌てて探る。 「ずいぶん変わった転び方したんだね」 「…。」 それはそうだよ、ズボンは360℃汚れてる。 自分で言っておきながら、転んだ汚れではないのは明白だ。 どうしよう。チラリと桃也くんを見ると、いつもの笑顔がない。 「ハンカチはいいよ。早く乗りな。帰ろ」 そう言われたけれど、わたしは黄色の花柄のハンカチをシートに敷いてから座った。 「三俣駅って、あの辺なにかあったっけ?」 車が走り出してからも私が何も話せないでいると、桃也くんから話しかけてくれた。 話題は話題だけど。 「えっとね、友達の家があって」 「そっか。」 「うん。」 …。気まずい。 「桃也くんは?」 「あー俺も友達と遊んでた」 「そっか」 「うん」 この時、圭のことはすっかり頭からとんでいた。 「あ、その角曲がって少ししたところの、左側のアパートだよ」 「久々だな、前はよく圭と…。あ、ごめん」 「あ、ううん」 思わず出してしまった話題に、気をつかってくれたのだろう。 車がやっとすれ違えるくらいの道を進み、見えてきた3階建てのアパート。 私の部屋は2階だ。当然だけど部屋は真っ暗。 「あの辺に停まってくれれば…」 しかし、私が言いたかった場所には珍しく車が停車していた。 深夜の道で、ハザードランプが赤くチカチカと付いていて目立つ。 近づくにつれ、それは私の見覚えのある車だと気づいた。 昼間に見ると緑っぽいのに、夜は青っぽくなる、あまり見かけない色の車…。 胸がドクッと波打ち、息が上手く吸えない。 恭ちゃんが、来てる─。
/452ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1778人が本棚に入れています
本棚に追加