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桃也くんはそう言うと、車をバックさせ、コンビニの駐車場を出た。
「…ごめんね」
「そんな状態で1人でおろせないよ」
多大なる迷惑だと分かっていても、正直なところ、心からほっとした。
勘づいたのにそれ以上聞いてこない桃也くんにも、感謝しかない。
桃也くんは実家住まいで、私も圭と一緒に何度か遊びに行ったことがあるし、家族とも面識がある。
夜中だから家族は寝ているだろうけど…。
そんなことを考えていると、バックの中でスマホのバイブが鳴り始めて心臓が跳ね上がる。
車内では男性アーティストの優しいバラードが流れているから、それに紛れて桃也くんには聴こえていないことを願ったけれど。
「電話じゃない?いいの?」
しっかり聴こえていた。
「あっ、ほんとだ」
取ってつけたような返事をしてからスマホを取り出して見ると、案の定[日野恭介]。
「友達だった。あとでかけ直すから大丈夫」
「…そう」
音が鳴り止むと、ゆっくりと息を吐きながら再度画面をつけた。
LINEの通知が12件。全て恭ちゃんからだった。
思わずゾッとしてしまい、既読しないままアプリを閉じて、スマホの電源も切った。
無言の車内に『ブーッ』と停止音が響く。
「あれ?充電切れちゃった?」
「あ、うん」
「俺ん家の充電器合うかなあ」
気の所為かな、息が、苦しい─。
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