2.後悔

18/18
1766人が本棚に入れています
本棚に追加
/452ページ
それから私は、助手席の窓を少しだけ開けて、通り過ぎていく暗い夜の住宅街を見ていた。 少しずつ涙も気持ちも落ち着いてきたけれど、ドクドクと黒く打つ心臓はそのままだった。 10分後、到着してバック駐車が始まり我に返ると、その場所は私の知る桃也くんの家ではなかった。 「あれ?ここ…」 「あ、そっか。知らないよね。俺、去年家出たんだ。今は1人」 落ち着いた雰囲気のマンションの駐車場。 10階くらいまであるだろうか。 窓は沢山あるけれど明かりのついているのは数える程だ。 「えっ!」 時間差で驚きが声になった。 まさか、一人暮らしをしていたなんて思いもよらなかった。 そうなると、二人きりになってしまう。 友達ならアリなのかな。 「あー大丈夫だよ、2部屋あるから」 そういう問題? まあでも、今更私たちがどうにかなるなんて考えられないし、こんなボロボロの状態の私が言える立場じゃない。 「あ、うん」 桃也くんは、“親友の元カノ”なんていう面倒くさいだろう友達を泊めてくれるなんて、なんて優しいんだろう。 恭ちゃんとあんなことがあった後なのに、男性の部屋でも怖くないと思うのは、他でもない、桃也くんだからだ。 彼から放出されるマイナスイオンは、昔から私の心を(ほぐ)してくれる。 「桃也くんって、レスキュー隊みたいだね」 「なんだそれ」 桃也くんのはにかんだ笑顔が、すごく久しぶりに感じた。 やっぱり、さっきのことには触れないでいてくれる。 桃也くんの部屋は、エレベーターに乗り、5階だった。 「綺麗なとこだね」 「たまたま修繕されたばかりでさ」 私は、 「ちょっと片すね」 と言って先に入って行った桃也くんに続き、 「お邪魔します」 と軽く頭を下げて、彼の部屋に入った。
/452ページ

最初のコメントを投稿しよう!