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止まっていた涙がポロッと、また一筋零れた。
その跡が一瞬で冷たくなる。
白い息が街の空気に溶け込むのを見つめながら頭の中を整理する。
圭に言われた通り、私は今までずっと桃也くんに彼女はいないものだと思ってた。
彼女の話なんて、一度も聞いたことがなかった。
…。
止めていた足を、前へ動かす。
前へ、前へ。
居酒屋や飲食店の多いこの駅周辺、土曜日なので人通りが多い中を、1人歩き抜ける。
ホームを抜けて、まるで私のタイミングを見計らったかのように来た電車に乗った。
席はガラガラだけど座らずに、ドアの近くの手すりに掴まり窓を見れば、そこには目を腫らした私が切なく映っている。
もう愛想尽かされちゃっただろうな…
みんなが背中を押してくれた。
でも、そのみんなは私が桃也くんに浴びせたあのひどい言葉たちを知らない。
きっと、ダメかもしれない。
もう、遅いかもしれない。
口から出た言葉達は消せない。
だけど、謝って、謝って、そして、感謝を伝えて、それから、気持ちを伝えよう。
今度こそ、ちゃんと。
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