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あれ……?
私、今、好きって言った…
ゆっくりと目の前までやってきた桃也くんの革靴を見ながら、頭を働かせた。
会えたらまず、ひどい言葉を言ってしまったことを謝るはずが。
今まで助けてくれた感謝を伝えるはずが。
思ったよりも早く帰宅した彼に心臓が爆発して、思い描いていた段取りを全て飛ばしてしまった。
「凛乃ちゃん…?」
桃也くんは私を見つけてからずっと無反応だった。
待ち伏せなんて嫌だっただろう、迷惑だっただろう、そんな気持ちになりたまらなく怖かった。
けれど思わず優しい声が上から降ってきたものだから、涙は溢れて止まらない。
「桃也くん、ごめんなさい、好き…なの。本当は、好きなの。いつの間にか、大好き…で」
もう、止められなかった。
ずっと言えなかった、言いたかった気持ち。
「ごめんなさい…酷いこと言って。私の顔なんてもう見たくないだろうけど、どうしても伝えたかったの…」
桃也くんの反応が怖くて続けて私が話していると、エレベーターが開く音のあと足音が聴こえてきた。
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