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「…突然、こっぴどく振られて、家で何も手につかなかったんだ」
「……その節は、ごめんなさい」
“足の踏み場もない”とかそんな散らかり方ではないけど、朝食のあとがあったり、部屋着が乱雑にソファに脱ぎ捨ててあったり、なにかの書類があちこちにある。
はは、と困ったように笑った桃也くんは対面キッチンのカウンターにビニール袋をそっと置いて、リモコンを手に取りエアコンをつけた。
「凛乃ちゃんのこと思い出しちゃうからあの弁当屋にもいけない始末。女々しいよな」
「そんなこと…私こそ、こんな突然押しかけちゃって…怖いよね」
冷静になってみれば、突然押しかけて、待ち伏せして、好き好き言って、泣き散らして。
そんな私らしくもない行動が途端に気恥ずかしくなってきてしまった。
けれど少しの沈黙あと、目が合った私達ははにかんだ。
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