6人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「とうとう、この時がきたか」
青雲の志を持ち続けて苦節三十年。
ようやく私は、総理大臣の地位へと登りつめた。
幼少時代より描いてきた青写真が、ようやく現実のものとなる。
「貴方の秘書として務めさせて頂き、三十年。私も感無量でございます」
秘書の青井が、青いハンカチで目元を拭う。
「早速、全国民に『例の宣言』を布告致しましょう。きっと水を得た青魚のように国民は狂喜乱舞するはずです」
「ああ。私も飛び跳ねたくてウズウズしている」
「そのお気持ちをどうぞ、全国民にお伝えして下さいませ」
青井に促され、私は壇上に上がる。
重大な布告と銘打っていたため、数多くのマスコミが押し寄せていた。いつもは支持率がどうだとか、不祥事がどうだとかと言って憂鬱な気持ちにさせられることばかりだが、今日ばかりは私の声を伝えてくれるマスコミに感謝である。
私は深呼吸をして、マイクに向かって叫んだ。
「本日より、月曜日を廃止する!」
瞬間、けたたましいカメラのシャッター音が響き渡って、私は光の中に包まれる。
眩いフラッシュを浴びていると、昔のことが、ふと思い返された。
最初のコメントを投稿しよう!