さらば、ブルーマンデー

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 幼少時代。私は肉体的にも精神的にも弱い人間だった。野良犬などに吠えられれば、ぴーこらぴーこらと泣き出してしまうような子どもだった。泣き虫な私は、クラスのガキ大将に目をつけられ、いつもいつもランドセルを余分に背負わされていた。そしていつからか、月曜日が憂鬱になった。なぜ、苦しい思いをさせられるのに学校へ行かなければならないのかと。とにもかくにも月曜日は憂鬱で仕方がなかった。  社会人時代。弱いままの私は、パワハラ上司の標的となった。仕事の出来も悪ければ、要領も悪いと社員の前で罵倒され、私は心を病んだ。無能な間抜けで仕事の出来ない私。そんなレッテルを解消するには、自殺をするしかない。そう思ったのは、会社へ向かう駅のホーム――月曜日だった。  もう何もかもを諦めて、電車に飛び込もうと思った、その時だった。  私の手を引いたのは、大学のゼミで後輩だった青井だった。 「何をしてるんですか、先輩!」  青天の霹靂(へきれき)だった。  まさか、死の間際に大学の後輩と再会することになるとは。  私はそのまま近くのカフェに連れられ、青井と相対した。会社は良いのかと訊ねたら、青井は答えた。「自分の尊敬する人が死のうとしているのに、会社になんて行ってられない」と。 「そんなに尊敬されるようなことをした記憶もないが」と私が言えば、青井は大きく首を横に振った。 「先輩の卒業研究は、他の誰よりも秀でていました。先輩のような人になれればと、先輩が大学を卒業してからもそう思い続けていました。そんな先輩を死のうとするまで追い詰めるなんて、それは社会が、――世界が間違っているのだと思います」     
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