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ある時、『神様』からの声が途絶えました。それはそれは唐突で、そして、私は呆然とするしかありませんでした。信じられますか、あなた。だって私はそれまでずぅっと、『神様』のお声と共に生きてきたのです。それがどうしたことでしょう。突然空中に投げ出されたかのように私はぐらぐらと揺れました。体が頭が心が揺れたのです。体中がばらばらになるかと思うくらい痛みました。きっと身体の一部を奪われる痛みにも似ていたのです。私は自分が世界一不幸だと思いました。そう思っても許されると思いました。神様だって許してくださる。だって今まで私はがんばってきたのですから。今くらい不調であることに、少しくらい甘えたって、誰も何も言わないと思っていました。何故なら皆、大なり小なり何かを抱えているものなのですから。私に打ち明けたように。私に縋ったように。それなら、私だって同じことをしても良いではありませんか。許されるのではありませんか。それが当然ではないでしょうか。
けれど、現実はそんなに甘くありませんでした。
私はまず罵られたのです。『甘えるな』、『役立たず』、『お前が神の声を聞けないのなら存在する意味がない』、『神は私たちを見捨てたのか』、『息をする価値もない』。
そして極めつけの言葉が皆の心を掴んでしまいました。
『お前を贄にすれば神は我々の元に戻るのではないか』
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