無限に広がる空

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『天高く馬肥ゆる季節と、古来から秋の空の事を言うそうだが。今年も極めて厳しい酷暑だった分、秋の青空の価値が身に染みるな』 秋の休日に、大切な幼馴染みである優と、同級生の北条との三人で。次の作品の画材となる物を求めて、特にあても無く街を散策をしながら空を見上げると。優と北条の二人も空を見上げて。 『“今年も”という所が救いが無いよな九条。せめて“今年は”だったら、来年の夏に少しは期待出来るんだけれどな』 ボクシング部に所属をしている北条が、良く日焼けをしている顔にかなり嫌そうな表情を浮かべながら話すと。私と同じ美術部に所属をしている優が、いつものように穏やかな笑みを浮かべながら。 『人間何かに期待をすると、裏切られた際の落胆も大きいですからね、北条君。この世の何にも期待を抱かない方が、少しは楽に生きられると思いますね』 『…藤原って、時々妙に怖い事を平然と言うよな』 優と北条の同級生の男子生徒の二人は、性格も生き方も正反対に思えるが。逆にそれで上手くいっているように思えるな。 『あっ、そうだ九条。次の絵の画材は、青空はどうだ?』 北条の提案を聞いて私と優の幼馴染みの二人は、改めて秋の青空を見上げて。 『ふむ、悪くは無いと思うが。何故秋の青空を次の作品の画材にすると良いと思ったのだ?。北条』 私の問いに北条は、悪戯っぽい表情を浮かべながら優の方を見て。 『九条は絵画、藤原は石膏像で芸術を追究しているだろ。絵で空の青さを表現は出来ても、石膏像で空の青さを表現するのは無理だと思うからな♪』 笑いながら理由を説明した北条に対して、優は一本とられたという苦笑を浮かべて。 『確かに北条君の言う通りに、石膏細工で空の無限の広がりを表現するのは難しいですね』 優の意見に私も同意をして頷くと。 『優の言う通りだな。青空は無限に広がる宇宙に続いている。青空の広がりを表現するという事は、無限に広がる宇宙の奥深さを表現する事に繋がる。うむ、これは挑みがいのある画材だ。礼を言う北条』 私と優の芸術家を志す幼馴染みの会話を聞いて、北条は好意的な表情を浮かべると。 『九条と藤原の二人は、真剣に芸術に打ち込んでいるよな。俺も後で一走りする事にする』 芸術とボクシング。私と優の二人と、北条が打ち込む物は異なるが。それでも情熱を注ぐという一点では、共通をしている。
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