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着崩れてしまったマントを着なおし、急いで家への道を戻る。彼は今日の昼過ぎに来ると言っていたから、それまでに何としてでも作らなくてはいけない。そう思って走って家に戻ろうとするその途中、大きな木の影からひょこっと見知った顔が現れる。
「エメ!良かった。探してたんだよ、家にもいないようだったからさ」
「ノイ?今日は昼から来るって…」
短く切りそろえた黒い髪に特徴的な長い耳。少しだけ切れ目の綺麗な紫色の目を少しだけ細めて彼は手に持った紙袋を持ち上げた。
「思ったよりも早く出来たから、お前にもすぐに食べさせたくて」
「別に僕は必要ないって言ってるのに」
折角彼のために作ろうと思ってたものが台無しだ。笑顔のノイの前に思わず愚痴を零してしまう。だが、それもいつもの事だ。ちょっとだけ悪いなと思いつつも、ノイは笑顔のままで「まぁまぁ」と僕のほうに寄ってくると手を繋ぐ。
「俺がいないとお前はすぐに食事を抜かすだろ?
それにご飯はひとりじゃなくて、ふたりで食べたほうが絶対美味しい!」
「…君は感想が欲しいだけだろ」
「それもある!」
胸を張って言うということは今日のはそれなりに自信作なのだろう。でなければ、出来立てをすぐに持ってくることなどしない。僕は一息吐くと、仕方ないなとノイを見た。
「じゃあ、早く行こうか」
「ああ!
…でも、その前に」
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