ゴーレムの少年

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 ぺしゃんこになってしまった薬草を片手に僕はあの時かなり、いや一方的に馬鹿とかなにするんだとか色々とわーわー文句を言っていたと思う。ノイは落ち込んでいた様子で僕の文句を聞いていたが、僕が文句を言い終わると突然泥だらけのカバンからふと紙包みを取り出すと「それやるから許してくれ!」って言ってきたのだ。  紙包みの中に入っていたのはいわゆる野いちごのサンドイッチで、よほど丁寧に包んでいたおかげか泥が中にまでしみこむことはなかったようだ。  別に僕はそんなものが欲しいわけじゃなくて、というより僕には『食事』そのものが不要だったのだけれど『サンドイッチを僕に渡す』という行為が彼の中では謝罪の形となっているのだろうと思って、素直にその場は受け取ったのだ。どうせきっと彼と会うことはないだろう。そう思って。  服についた泥を簡単に払ってから、手袋を取り二人で倒れた大木の上に座って彼がなにやら期待するような目で見ていたので、サンドイッチを仕方なく一口頬張った。久しぶりに食べたご飯はむせ返るように甘酸っぱかった。久しぶりのご飯だったから、思わずそのまま、無言で二口、三口と口に運び、恐らくその時の僕は驚いたような、それかよっぽどおなかをすかせていたようなそんな表情をしていたのだろう。 「ごちそうさま、美味しかった」     
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