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食べ終わった後は紙包みをそのままノイへと付き返してさっさと家に帰った。久しぶりにご飯を食べて『人』らしさを一瞬思い出しながら僕は怪我をした小鳥のために明日こそは薬草を探しだそう。そんな決意を胸に夜を過ごして、陽の光が窓から入ってくるの時間に家を出た。家を出たその先の獣道にもう会わないだろうと思っていたノイが、そこに立っていたのだ。
「昨日は悪かったな。ほら、これを探してたんだろ」
「え?」
そう言って彼は昨日僕が探していた薬草を渡してきたのだ。よく見ると彼の服はところどころが泥だらけで、腕に切り傷を作っていた。
差し出す彼の腕を僕は手に取ると、薬草ではなくてその傷に触る。
「いたっ!」
「馬鹿じゃないの?
これ、ハゼの枝で引っ掻いて出来た傷でしょ?傷口がちょっと紫色になってる。
早く治療しなくちゃ膿ができちゃうよ」
鞄のポケットから小瓶とガーゼを取り出すと、中に入ってる液体をガーゼにつけてから傷口にの上において、さらにその上に葉っぱをのせて、ぐるぐるとそれが落ちないようにテープで巻く。
「薬?」
「あくまでも応急処置だからね。家に帰ったらちゃんと消毒してもらいなよ?
…それと」
巻かれた自分の腕をしげしげと見つめるノイの手から僕は薬草を取ると言う。
「薬草、ありがと」
「おう!」
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