青色の感情

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青色の感情

木漏れ日が降り注ぐ窓際に座る、艶やかな黒髪を持つ少女。名前は確か―― 「涼子ー! お昼一緒に食べよー♪」 「あ、うん……いいよ」 リョーコと呼ばれた少女は、栗色のショートヘアーを持つ少女に話しかけられた。二人は机を寄せて、お弁当を鞄から出し、談笑しながら昼食を取り始める。 そうだった。彼女の名前はリョーコだ。あまり名前を呼んだことがないから、すっかりど忘れしていた。 僕は和気藹々と昼食を取る二人の様子を眺め続ける。二人は、昨日やっていた音楽番組の話や、次に開催されるアニメのイベントの話などで盛り上がっているようだった。 一見すれば、花の女子高生の楽し気な昼食だが、僕の眼にははっきりとその状況を否定するものが映し出されている。 先程話しかけてきた栗色の紙を持つ少女――彼女の心臓は黄色、つまり喜びを表している。 しかし、リョーコと呼ばれた黒髪の少女の心臓は、悲しみを示す青色をしていた。ただの青色ではなく、曇りがかった空のような濃い青色だ。この色は悲しみよりも強い『悲嘆』の感情を表している。 姦しく楽しげに話しているというのに、リョーコの心臓は悲嘆の青色を浮かべたままだ。     
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