青色の感情

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いや、正確に言えば、感情の色が見えるようになった時から、リョーコの心臓はずっと濃い青色をしていたのだ。 誰かと話していようが、一人で本を読んでいようが、彼女の心臓は濃い青一色だった。生まれたころからその色しか与えられていないかのように、一切変わることがない。 昨日、試しに彼女を笑わせようと変顔や一発芸をやってはみたのだが、こっちに見向きすることもなく、感情の色が変わることもなく、僕がただ単に大恥をかいただけで終わった。誰かが僕を撃ってくれることをあれほど願った日などない――それくらいの黒歴史を刻んでしまったのだ。 彼女は一体、何に悲しんでいるのだろうか。その原因を探り始めて暫く経つが、未だに分からない。せいぜい分かることと言えば、どんな状況であっても彼女の感情の色は悲嘆の濃い青のままということくらいだ。 クラスの連中からは、リョーコが何かがきっかけで変わってしまったとか、そういう話を聞いたこともないし、心当たりがある人物は誰もいない。 もし『僕は感情の色が見えるんだが、リョーコはずっと悲嘆の青色を浮かべている。誰か、その原因を一緒に探してくれ』など言えば、僕が笑い者にされる未来は確定だ。 だが、眼に見える事実を見ないふりにすることは出来ない。     
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