行方

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行方

蒼天に茜色が交わり始める頃。 放課後――リョーコは誰かと一緒に帰るわけでもなく、一人で帰路に向かっている最中だ。彼女の家は、校門を出て右に曲がり、真っ直ぐ大通りを歩いて10分経ったところにある。 そして僕は、木の陰やら塀の裏やらに隠れ、さながらスニーキングミッションをするかのように、彼女の後ろを一定間隔で追っているのだ。 正直、この行為を思いつき、尚且つ実行してしまった数分前の僕を、止められるものなら止めたい。バックトゥザフューチャーのデロリアンをこんなにまで欲したのは初めてだ。 いくら彼女の感情の色が悲嘆の青色を浮かべている理由を知りたいからと言えど、今僕がやっていることはただのストーカーでしかない。 幸いなことにまだ誰も僕のこの行いに気づく者は誰一人としていないが、もし気づかれでもしたら……。そう考えると、一気に血の気が引いていく。 やはり引き返そうか。いや……ここまで来たのなら、見つからないように細心の注意を払って行動すれば問題はない。だが、この後ろめたさを拭い去ることは出来ないままだ。一体どうすればいいんだ……。 そんなことを考えていると、リョーコの姿を見失ってしまった。 先程まで目の前にいたはずの少女が、一体どこに消えたのか。僕が辺りをキョロキョロと見まわしていると、数メートル左前にあったコンビニから黒髪を靡かせた少女が出てきた。リョーコだ。 そして彼女は右手に小さなコンビニ袋を下げ、大通りの方には向かわず、何故か反対方向の小さな路地へと進んでいった。 僕は木の陰から移動して、足音を立てずにリョーコの後を追う。 狭い路地を抜け、彼女が向かった先は、僕にも馴染みがある場所だった。 そこは緑が生い茂る小さな公園。滑り台、ブランコ、鉄棒、砂場といったオーソドックスな遊具とベンチが二つという、どこにでもある普通の公園であり、僕とリョーコが何度か遊んだ場所でもあるのだ。
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