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ミーちゃん……それは、リョーコが僕に与えてくれた名前だ。
すると彼女はスカートのポケットからスマホを取り出し、ポンポンと操作をし始めた。
もう少し近くで確認するため、僕は彼女にゆっくりと近づく。足音を立てずに忍び足で近づき、彼女のスマホ画面を覗き見ると、そこにはリョーコの膝の上で寝転ぶ青い瞳を持つ黒ぶちの猫――僕の姿が画面いっぱいに写しだされていたのだ。
「ミーちゃん……あの時、私がいきなり突っ込んできた車に引かれそうになったでしょ? でも、それを見てたミーちゃんが、私に体当たりして助けてくれたよね。私、嬉しかったよ……。ミーちゃんは、私にとって自分の兄弟や子供みたいに、すごく大事な存在だった。だから、今あなたがここで眠ってるのを、私は……まだ信じたくないよ」
リョーコの瞳から、一縷の涙が流れた。
僕が寝てる? 僕は今、君の近くにいる。寝てなんかいない。一体何を言っているんだ?
僕は彼女の言う意味がよく分からず、泣いているリョーコを取り敢えず慰めようと、いつものように足に擦り寄ってみせた。
だが、擦り寄ろうとするが感覚がない。足に擦り寄ったはずなのに、僕の体は彼女をすり抜けてしまった。
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