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生まれたこと、死んでいくこと。
それ以上の事実などないとしても、人間はそれ以上の何かを求めてしまう。
それは美しく散るためか、それとも自らの欲望を満たすためなのか。
一生をかけて知ることはただひとつ。
「なんだよ。折角盗みに来たっていうのに。もうとっくに滅んでたなんてなー。誰だよ、この俺にデマなんかながしやがって」
男は闇に紛れながら、黒い髪を揺らしていた。
「これじゃあダメだな。なら、えっと、定妙炎家にでも忍び込んでみるか」
軽い身のこなしで、男は木から木へと飛び移り、また、家から家へとジャンプする。
その姿はまるで月夜に現れる猿、いや、ネズミのようだ。
立派な佇まいにも関わらす、衰退気味だと言われている定妙炎家に忍び込んだ男は、広いお屋敷にも関わらず、見張りの一人もいないのを良いことに、どんどん進んで行った。
宝石でも金でも、何かしら手に入れば良いと思いながらある部屋に入ると、そこには見たこともないような大きな金で出来た箱がひとつあった。
「うひょ。まじか。すっげえな。中身は何が入ってるかなーっと・・・」
重たい蓋を、中身が欲しいというただそれだけの気持ちで開けると、そこには何も入っていなかった。
首を傾げた男だが、何かに気付くと、慌てて蓋を閉めて何処かに身を隠そうとする。
その時丁度、がら、とその部屋に誰かが入ってきた。
危ない危ないと、男はその人物が部屋から出て行くのを待つことにした。
少しすると、その男は部屋から出て行った音がしたため、ふう、と息を吐きながら、ゆっくりと姿を見せた。
「誰かな?」
「!!!」
出て行ったと思っていたし、気配を感じなかったが、そこにまだ男はいた。
抵抗しようと、隠し持っていた銃をこっそりと手にもち、振り向き際に撃とうとしたが、男はいなかった。
そして次の瞬間には、痛みが走った。
「・・・ん」
男が目を覚ましたときには、すでに牢屋に入れられていた。
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