出会いは初夏

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しばらく、空を眺めたあと、 「これで分かった?」 「わかっー」 彼女の方をみると視線と視線がぶつかり、 どきっとした。 「私、こうやって空を見ると心が落ち着くの。 たいていの悩みは、持っていってくれるよ。」 そう語る彼女は、今まで会ったことのない不思議な人だと思った。 「そんなに大切な場所、僕に教えて良かったの?」 「だから、教えたの。さっき、教室で元気なかったみたいだから。」 胸が熱くなるのを感じた。 「君のおかげで、もう悩みは良くなったよ。 そういえば、名前は?」 「私は、蒼空。蒼い空と書いて“そら”。」 自分の名前を名乗るとむくっと起きあがり、僕に向かって手を差し伸べた。 「これからよろしくね。あおいくん。」 なんで、僕の名前を? そう思ったけど、彼女の笑顔を見たら聞かなくてもいいと思った。 差し出された彼女の手をとった。 風に揺れる彼女の髪から太陽の香りがした。 それから、僕達は、天気のいい日に屋上で空を見上げるようになった。 蒼空と一緒に寝転ぶこの時間が一番落ち着く。 「あのさ。」 僕から話し始めた。 「なぁに?」 彼女は空を見上げたまま返事をする。 「僕は、蒼空が好きだよ。」 「私も、空が好き。」 と、にっこり笑う。 僕は苦笑い。 そっちの、空じゃないのに。 でも、いまはこのままでいい。 一緒に空に吸われていれば。 空を見る。 やっぱり、今日も蒼い空だな。
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