第2章 アマチュア小説家は狙われる

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昨日は、今後について一切触れられなかった。 というのも、皆疲れていたし、すぐに現実を直視する気力が無かったからだとは思うが。 「クレトくん。君はどうしたいですか?私達と旅をするか、それとも王宮で悠々自適の生活を送るか」 「おい、その言い方はあんまりじゃねぇか?仮にも聖女様って言うのによ」 「リスター、では貴方なら何と言うのですか?」 「どうしたいか、それだけでいいんじゃねぇの」 「そう言われたら、彼は『元の世界に戻りたい』そう言うでしょうね」 セフィルは俺の気持ちを俺よりも分かってるようだ。 正直、この世界は現実世界とは異なりすぎる。 まだ1日も経っていないが出来るなら慣れ親しんだ元の世界に戻りたいとは思う。 でも、元の世界は…。いや、ここで考えることじゃない。 とにかく、俺に今ある選択肢はついて行くか、置いていかれるか、その2つという事だけ。 だったら答えは決まってる。 「あぁ、確かに出来るなら元の世界に戻りたいです。でも、無理だって分かってるから、それなら皆とついて行く方が俺的には、安心…します」 「…てかさ~、ずっと気になってたんだけどその妙に言い慣れてない感じの敬語、やめたら?僕、そういうの嫌いだし」 「そうですね、一緒に行くというなら堅苦しいのは無しと言うことで」 「クレト…敬語…ナシ…」 「うわっ!!ちょっ、ダヴィン!!急に後ろに立つのはナシって言ったでしょ!!」 「ルースが後から来た…。文句は言わせない…」 全く、この狩人と魔術師のコンビは空気をぶち壊しにしてくれる。 でも、なんかこう、机の上の世界がこうして目の前に広がってるとわくわくしてくるような気がしてきた。 「クレト。これからよろしく頼むよ」 「こちらこそ。聖剣の勇者、アーベルト」 あぁ、やっと敬語無しで話せた。 アーベルトは笑いながら俺の頭を撫でる。 その感触が夢でないといいなと心の中で密かに願いながら。 「じゃあ、そろそろこの森に来た1番の目的の遺跡へ行こう」 「遺跡?」 「えぇ。この森には古くからの伝承に書かれている勇者の聖剣が封印されているとあるのです」 「聖女がいる今、聖剣を取りにわざわざ行かなくてもいいんだけど念の為にって感じ」 「聖女が聖剣に何か関わりがあるのか?」 「それは後で私が説明致します」 身支度を整え、俺たちは聖剣が封印されているという遺跡へ向かった。
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