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俺が、そう確信したのはすぐだ。
目が覚めると、森で視界には、自分好みの主人公、アーベルト・ル・フォン・フェルータがいた。
初めは嘘かと思ったが、名前を聞くと、同じだった。
「大丈夫ですか?ここ、コリアッタの森は魔獣が出るから人は滅多に入らないと聞きますが、何の用事で…」
「アーベルト、彼は目覚めたばかりなのです。少し黙りなさい」
しゅんとするアーベルトに代わりこちらへ来たのは…
「すみません、私の連れがご迷惑をおかけして…。私はセフィル・リ・ラザール。神官です」
「俺は和城 紅斗。こちらこそ、助けてくれてありがとうございます」
コリアッタの森。俺が描いている最新章の場所だ。
厄介なことに、原作はこの続きを描いている途中だ。
「セフィルさん。あの…質問良いですか?」
「何かしましたか、ワジョウさん?」
「えっと…このコリアッタの森には、2人で来たんですか?」
「いえ、6人できました。私とアーベルトの他に4人。今は食料調達してるからここに居ないだけです。それが何か?」
「なっ、ナンデモアリマセン」
まずい。ここで龍を消滅させる方法について明かされるって場面に来てる。しかも、ここで勇者達は、魔王に仕える四柱の1つにやられる展開を作っていた。
まだ、世の中に出していないけど。
そんな場面に俺がいるとか、笑えない。全く笑えない。
頭を抱えて唸っていると、アーベルトが後ろから抱きついてきた。
「大丈夫ですよ、ワジョウ。貴方がここに来た理由は詮索しないし、無事に家に返しますから。だから、安心して?」
「あっ、アーベルトさん、あの…」
耳元で囁かれているから息が…息がかかってるんだよ!!
元々耳が弱い俺にそれはちょっとマジでやばいって言うか…。
完全に困惑しているとセフィルが魔法でアーベルトに制裁を加える。
「痛っ!セフィル!急に何するんだ!」
「ワジョウが困惑してるでしょう。節操なしに口説くのはいい加減やめなさい」
セフィルが真面目に説教しているが、俺の名前がカタコトなのがどうも笑ってしまう。
勇者がこんな性格になったのは、元々俺のせいだし、助けてやるか。
「セフィルさん、気にしないで下さい。俺は別に気にしてませんから」
ですが…セフィルが言いかけた瞬間、足音が聞こえ始めた。
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