第1章 アマチュア小説家は飛ばされる。

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だが、夕食時は皆黙々と食べていた。黙々と。 不味かったのかな?そう思いながら、パンにハーブ焼きを挟んでもぐもぐしていると、アーベルトがこちらを見てきた。 その顔は、まさに愛玩動物を見ているかのようで…。 「あっ、あの…アーベルトさん」 「どうしたんだい?」 「こちらをずっと見るの、やめてくれませんか?」 「あぁ、ごめん。気にしなくていいよ」 そう言われても、気になるものは気になるんだよ!! 全く、誰がこいつをこんな性格に…。って自分だった。 本当に、なんで主人公をこんな性格にしたんだっけ? そんなことを考えていると、全員、食べ終わったようだ。 セフィルは紅茶を入れている。オシャレだなぁ…。 「それではどうしてこの森に居たのか、教えてくれますか?」 「えっと…」 言葉に詰まる。だって、編集部に原稿を届ける途中のエレベーターに入った後から記憶がなくて、気がついたら目の前に自分の作品の主人公がいましたなんて言ってもわけが分からず混乱するだろうし、信じてくれない。 なら、この付近を旅してた旅人ですって言っても、服装でアウト。なんて説明したらいいのか分からない。 そんなことを頭の中でぐるぐると考えていると、 「そう言えば、狩りをしている最中に大きな光が見えたんだけど、それと関係してるのか?」 大きな光 …? 「さぁ?分かりませんが、その光を放った場所に彼はいましたね」 大きな光が本当だとしたら、異世界転移しましたって言っても疑われないよな? 「あの…。実は俺、この世界の人間じゃないんです」 「「「「「「は?」」」」」」 うわぁ、見事に言葉が被った。 「気がついたら目の前にアーベルトさんがいて、この森に居たんです。だから…」 「まさか、君が女神の使者『聖女』なのか?」 「は?」 いやいやいや、男に聖女はないだろ!! ってか、この話ぶりだと、魔王を消滅させる方法についての手がかりを得てしまっているようだ。 だが、聖女は設定になかったような…? 「聖女とは、異世界より女神に召喚されしお方。その知識は賢者より多く、その姿は天使と間違われるほど美しいと聞く」 「ほんとにそいつが聖女なの?どうも胡散臭いんだけど」 あぁ、俺も同感だ。
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