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目が覚めると、セフィルが心配そうにこちらを覗いていた。
「大丈夫ですか、クレトくん?」
「大丈夫って、何が…?」
気がつくと、涙を流していた。
高校生にもなって、寝ている間に涙を流すとか、恥ずかしい…。
「何か嫌な夢でも見ましたか?」
「いや、別に…」
そうだ、あの後喧嘩に巻き込まれて騒いでたんだ。
ルースは少年の見た目に見えて実は20歳を過ぎているとか、リスターに肩車されたりとか。
現実世界で出来なかったことをたくさんやって、疲れて寝てしまったんだ。
多分、そのせいだろう。
思い出したくないことを思い出して俺は泣いてしまったんだ。
ふと、下半身が暖かいと思い、下を見ると、白いローブがかかっていた。
「あれ、このローブ…」
「あぁ、それは私のです。その服装は目立ちますから、それを身につけていてください。それに、布団もかけずに寝てしまうから、そうやってかけていたんです」
「そっか。ありがとうございます、セフィルさん」
「別に、神官として当たり前のことをしたまでです」
そう言いながら、照れ隠しをするセフィルがなんだか可愛く見えて、思わず頭を撫でてしまいたくなった。
「明日は、遺跡へ行きます。ですから今は寝てなさい、クレトくん」
「セフィルは?」
「見張りですよ。別に、貴方まで付き合う必要はありません。それとも…寝れませんか?」
「いっいや、別に…」
そうだ。ここは日本じゃない。
だから、いつ魔獣が来てもおかしくないんだ。
そんなことも忘れていた自分の頭に腹がたつ。
セフィルは、神官なのに意外としっかりとした体型だ。
それもそうだ。魔獣はいつも正面から来るわけではない。
後ろから奇襲をかけられることもある。
セフィルはそれに対応するため、夜1人で格闘術の練習をしている。
多分、そんな隠れた努力家的なところが、あの作品の好きなキャラクターランキング第1位になった理由なのだろう。
そんなセフィルの鼻歌を聞きながら、俺はゆっくりとまた深い眠りについた。
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