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補習地獄が終焉の時を迎えた夏休み明け、担任の口から安藤が転校したことが伝えられた。
しばらくの間、転校の理由は安藤の父親が大きな借金作ったからじゃないかとか実はいじめられていたんじゃないかとかそんな噂が飛び交っていた。
特定の人と深い関係を作ってこなかったから、真実を知る人がおらず、結果こんな風にさまざまな憶測が飛び交っているんだろう。
『仲良くなってもすぐ忘れられちゃうから』
そう、チョークで書かれた小さな空を見つめながらつぶやいた安藤の言葉を思い出した。
きっと安藤の言うとおりなんだろう。
いずれ安藤に関する噂は薄れていって、安藤の存在も忘れられていく。
それでも多分俺は忘れられないだろう。驟雨の音が響くなか、安藤が書いた小さな空を。安藤が望んだ青空を。
安藤、お前本当は誰かの中に自分を残したかったんじゃないか?その誰かに俺を選び、俺の記憶の中に安藤の青空を残したんじゃないのか?
本当つかみどころの無い意味わかんないやつだったな。
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