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一人でサキイカを食べるのも暇になってきて、寝ているであろう隼人の顔に落書きをしようとマッキ―ペンを持ってきて隼人に近づく。
バレないように細心の注意を払って、少しずつ少しずつ近づいて行く。
隼人の目の前まで無事に来る事が出来て、マッキ―ペンの蓋を取る。そのままそーっと顔まで持って行ったところで、思いっきり腹を蹴られた。
「いっ・・・・・・。痛い・・・。声が出ないくらい痛い。」
「出てるから大丈夫だな。渋沢よぉ・・・。俺の顔に落書きしようとしたな?」
紅蓮もそうだが、隼人も怒らせると怖い。それゆえ、頭の中で危険信号も出ていた。
しかし、危険信号はいまや警報を鳴らしてランプが点滅している。『早く逃げろ』と言っている。
「こんにゃろ。」
身体を起こした隼人が、渋沢の手からマッキ―ペンを奪い取って、渋沢の顔に報復と言わんばかりに落書きしていく。その早業に、渋沢はただ抵抗も出来ずにいた。
「ま、このへんで勘弁してやるよ。」
そう言われて、急いで洗面所まで行って鏡で確認する。そこに写っていたのは、とある猫型ロボットと思われる髭や顔の輪郭などだった。
「なんでチョイスがコレなんだよ!なんか微妙過ぎて反応に困んだろ!」
「別に反応しなくてもいいだろ。最近上手くなってきたから試しに書いてみただけだ。それに、他のキャラクターは分かんなくても、それだったら紅蓮も分かんじゃねえか?」
隼人は、自分の部屋からまた大量の本を持ってきて、ソファに座って読みだした。渋沢が用意したサキイカを口に咥えながら、ものすごいスピードで読み続ける。
その面白い光景を、なんとか残したいと思った渋沢は、携帯のムービーで隼人を撮り始める。その途端に隼人からのサキイカ投げという反撃にあい、あっけなく幕を閉じることとなった。
暇で暇でしょうがない渋沢が時計に目をやると、自分が帰ってきてから一時間が過ぎようとしているところだった。
紅蓮は寝ているし、隼人は本を読んでいる。このままぼーっとしていたら、脳味噌が腐ってしまいそうだと思った。
「やっと一時間か・・・。俺は一体今日何をしていたんだろうか・・・。」
何気なくぽつりと言った独り言だったが、ソレを聞くや否や、隼人が本を床にドサッと落とした。
すごい音がした。相当重い本だったんだろう。
「どうしたの~?」
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