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「意外と地味で陰湿ないじめをするんだな。しかも陰の指導者。」
厭味をたっぷり込めて言ってはみたが、紅蓮は隼人がソファの家でもそもそ動いているほんの数秒の間に、寝入ってしまっていた。
それに気付いた隼人は盛大なため息をつき、二冊目の本を取り出して表紙をめくった。
歴史の事が記されているその本は、通常の表舞台の歴史は勿論、裏歴史の事も多く書かれている。歴史大好き人間や、評論家たちが喉から手が出るほど欲しい本であると同時に、確かめようのない歴史に対する罵倒であるという人も出てくるであろう内容がわんさか載っている。
隼人は歴史がそれほど好きではない。
それは『過去』の事象であることと、自分の目では確認できないことであるということ。それから、とくに興味が無いという事が挙げられた。
過去や歴史といった、時間的に流れていない空間の出来事に関して、隼人は紅蓮や渋沢よりも冷静沈着に判断する。
だから、歴史の本を読んだところで自分には全くの無関係と考えている。
―コンコン・・・
「はい?」
突然、ドアをノックされ、渋沢がソファから立ち上がってサキイカを咥えながら出てみる。
ドアの前に立っていたのは『輪廻郵便』の仕事服を着た男の人で、A4が入る大きさの封筒を差し出してきた。
「紅蓮裁判長宛てです。サインお願いします。」
そう言われ、渋沢は適当にサインして封筒を受け取る。
通常、こういった重要書類を郵便などといった危ない手段で受け渡しすることは無いのだが、此処では郵便は郵便でも『輪廻郵便』という、特殊な郵便でならOKとされている。
その理由は、被告が人間ではなく、『悪魔』がとり憑いた人間や、人間の皮を被った『悪魔』といった、人間以外の者を裁くこの『無天神裁判所』においては、情報が漏れても支障は少ない事と、他の者が見ても分からないような暗号で資料を作成しているためである。
『輪廻郵便』が扱うのは、そういった通常以外の郵便なのである。
郵便局の人間がもし、封筒の中身を見ようものなら、即裁判所行き。有罪判決は免れない。
そういう厳しいところでもあるため、絶大な信頼の元、重要書類を任されるのだ。
「あ。例の書類だ。隼人、書類が届いたよ。事務の仕事して。」
読んでいた歴史の本を、もう読み終えた隼人は、ソファから身体を起こして資料に目を向ける。
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