これは何なのだ?

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 何と言うことだろう?自分がこんなに心を鷲掴みにされるなんて...!!しかも彼女は3次元で娘ほどの年齢。口を開けばウソまみれの世の中。人付き合いに疲れ、2次元に引きこもっていた自分。歌はボーカロイドに任せればいい。「自分は歌うだけしかできない」と言いながら、実際は支援もせずに着服し、アイドル達は大人の言いなりでやらされてる感がバレバレなのだ。そんな歌を聞いても、心に響くわけなどない。そう思っていた...はずだった...  背筋がゾッとした。今までなかった感覚に、ヤバイと思った。彼女は自分を見ているわけではないのに、あの眼差しは何なのだ。彼女を見ることができない。そして彼女は憂いを歌う。大人が作った曲のはずなのに、何故自分を苦しめるのだ。こんなに心がザワザワするなんて、いてもたってもいられないなんて...訳もなく家の中をうろうろ、うろうろ。ああ、落ち着きやしない。あんな若い子が、ゾクゾクするような目で、歌で語りかけてくる。こんな気持ちになるなんて、恋でも愛でもない複雑な感情。彼女に蔑まれたい...そして、罵ってほしい...  自分は就活するようになった。親のスネをかじり、テレビに文句を言っていた日々。ブランクは長く、書類だけで落とされてしまうけど、次がある。今からでも遅くはない。彼女が教えてくれた気がした。自分だけじゃないのはわかっているけれど、彼女に見つめられると気が引き締まった気がした。自分は、ささやかでも一歩踏み出す事が出来た。彼女に感謝したい。そして、自分にもいつか家庭をもてたならば、彼女のような娘から「お父さん?しっかりしてよ!!」って言われたい。
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