藍と青の邂逅

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結果は満点。あくまで自己採点だし、さっきも言ったように回答欄を間違えている可能性もあるが――ちょっと前まで半分も取れなかったやつの解答とはとても思えない。 約二カ月前の夏休み中盤、突然勉強に目覚めたこの生徒は、数か月後に迫る大学受験に向けてフルスピードで走り始めた。  いや、寒川でなくたって、夏休みくらいから必死に勉強を始める高三の生徒はごまんといる。それでも、彼に関しては「突然目覚めた」としか形容出来ない程、劇的に、猛烈に、それはもうドラマティックに、勉強にのめり込み始めたのである。 「やった、やばい。どうしよ、先生、あかん、お腹痛い」 「トイレ行け」 「待って! 先生冷たい!」 「アイスの食べ過ぎや。もう十月やぞ」 「違う違う! 違うから!」  平静を装ってはいるが、俺は結構驚いている。大学を卒業してここで働き始めて早十年以上経つが、こんな劇的なやつは久しぶりに見た。いや、初めてかもしれない。 「なあ! 俺U大受かるかな!」 「さあ、どうやろうな……他の教科見せてみ。自己採点したんやろ」 「うん!」  寒川は伸びた前髪をふわりとなびかせ、事務室の入り口前に置いた鞄を取りに走った。 ――その背景に、不覚にも、青い空を見てしまう。  寒川の前髪は、二か月前は影も形もなかった。     
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