藍と青の邂逅

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藍と青の邂逅

「青は藍より出でて藍より青し」  初めてその言葉を聞いたのはいつだったか、もう忘れてしまったが、何となく語呂がいいせいかいつまでも耳の奥に残っていた。意味はよくわかっていなかった。多分聞いてなかったんだと思う。辞書をひくのも面倒で、そのまましばらくずるずると年を重ねた。  年をとりながら考えた。青いというのはつまり若いということだから、渋みを帯びた藍色の大人から生まれる子供は、みずみずしく、青々としているということではないのか、と。そして青々した子供も年を重ねるといつしか渋い藍色になるという無限ループ。  後に姉貴に「弟子が師匠を超えることのたとえ」だと諭されるのだが、俺は自分の考えもあながち間違っていないと思っている。 「――先生?」  パイプ椅子に半分だけ腰かけた少年は、不安な顔で俺の手元をのぞき込む。 「ちょっと待て、もう一回確認する」  俺はデスクの上に広げた書類から目を挙げずにそう答えた。     
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