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1-1.望んだものは小さくて
誰よりも優れた統治者に従う国民は、楽でいい。
皮肉気なことを考えながら、ウィリアムはトレードマークの三つ編みを直し始めた。
目の前の資料に素早く目を通し、重要度を判断して振り分けていく。簡単そうで難しい作業を、まだ20代前半の青年は無造作に行っていた。
だが彼の判断に間違いはない。
少なくとも、見た目より真面目な青年が取り返しのつかないミスをした事はなかった。
シュミレ国――北の山脈に背を守られ、南の海が恵みを運ぶ国だ。
自ら戦を仕掛けることはないが、常に『大陸一の大国』として周囲の国々の上に君臨し続けてきた。
穏やかな気候と豊富な資源ゆえに狙われやすい国でもある。
編み終えた三つ編みを括り、最後に蒼いリボンを結ぶ。沢山あるリボンの色の中でひときわ鮮やかな蒼は、主である少年から与えられたものだった。
「さて、じゃあ報告に行きますか」
軽い口調で立ち上がり、3つに仕分けた書類の1束を手にする。
一番量の多い束は、主たる王の決裁が必要な重要書類だ。
王族というのも楽ではない、遊んで優雅に暮らせればいいのだろうが、仕事は山済み……いっそ姫君に生まれたなら違うのだろうけれど。
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